第20章 勉強
「……あと何分?」
「もう少しだ」
「ちゃんと教えてね」
「ああ」
「五分経ったら……」
「ちゃんと起こす」
「うん」
――ピピッ。
アラームが鳴る。
「……五分か」
脹相がホットタオルを外す。
私はゆっくり目を開ける。
まだ少しぼんやりする視界の中で、すぐ近くにいる脹相の顔が見えた。
「……」
「……」
目が合う。
一瞬、どちらも何も言わない。
そして、脹相がふっと微笑んだ。
私もつられて笑う。
「……ありがとう」
「ああ」
「目、すごく楽になった」
「それならよかった」
私は軽く首を回す。
肩も手も、さっきよりずっと軽い。
「……もう一回頑張る」
問題集へ手を伸ばす。
そのとき、脹相が机の上に小さな飴を置いた。
ころん。
「これも食べろ」
「……飴?」
「ああ。糖分補給だ」
私は飴を見て、それから脹相を見る。
「ありがとう」
手を伸ばす。
けれど、脹相は飴を持ち上げ、袋を開ける。
「口を開けろ」
「……食べさせてくれるの?」
「ああ」
少しだけ照れながら、私は口を開けた?
「あーん……」
脹相が飴を口元へ運ぶ。
ころん。
飴が口の中へ入る。
その瞬間、指先が唇にほんの少し触れた。
「……っ」
脹相も気づいたらしく、すぐに手を引く。
「……すまない」
「ううん」
私は飴を舐めながら、小さく笑った。
「……甘い」
「そうだな」
「飴が?」
「それもある」
「……?」
脹相が微笑む。
「俺は甘やかし担当だからな」
「……ふふっ」
「何だ?」
「じゃあ、また疲れたら甘やかしてね」
「ああ」
「勉強終わった後も?」
「もちろんだ」
私は少し嬉しくなって、問題集を開く。
「じゃあ、もう一回頑張る」
「ああ。だが、無理はするな」
「うん」
今度はさっきよりも軽い気持ちで、ペンを握る。
頑張ることをやめるつもりはない。
一位を目指すことも、完璧を目指すことも。
でも――。
自分では気づかない疲れまで見つけて、ちゃんと休ませてくれる人が隣にいる。
そう思えるだけで、また安心して机に向かえた。