第20章 勉強
紙をめくる音と、シャーペンがノートを走る音だけが部屋に響いていた。
私は机に向かったまま、黙々と問題を解いている。
一問。
答え合わせ。
正解。
次の問題。
また正解。
数学の問題集を一通り終えると、間違えた問題だけをもう一度確認する。
その間にも、何度か瞬きをする。
いつもより少し多い。
「……」
私は気にせず、解答欄と自分の計算式を見比べる。
そして無意識に、目元を指先で押さえた。
「……」
向かいにいた脹相が、こちらを見ている。
けれど、私は気づかない。
私は次の問題へ進み、また答え合わせをする。
正解。
それでも納得するまで、問題文から計算式まで一つずつ確認する。
その途中で、今度はペンを持っていた手を反対の手で包むようにして、指を揉んだ。
長時間ペンを握っていたせいで、指先が少し固まっている。
「……」
脹相はそれを黙って見ていた。
私はまた問題へ視線を戻す。
「……よし」
次のページへ進もうとした、そのとき。
「待て」
「……?」
私は顔を上げる。
「どうしたの?」
「少し休め」
「まだ大丈夫だよ」
「そうか?」
「うん」
私は問題集を閉じることなく答える。
「まだ集中できるし、この範囲ももう少しで終わるから」
「……」
脹相はしばらく私を見つめた。
「さっきから瞬きが増えている」
「え?」
「何度も目元を押さえていただろう」
「……見てたの?」
「ああ」
「でも、ちょっと目が疲れただけ」
「それから」
脹相が私の手を見る。
「指も揉んでいた」
「……」
「痛むのか?」
「痛いってほどじゃないよ」
「なら、なおさら今休め」
「でも――」
「正解している問題を何度も確認しているのも知っている」
私は黙った。
「ミスをしたくないんだろう?」
「……うん」
「だからこそ休め」
脹相が問題集をそっと閉じる。