第18章 心音
夜。ソファに座っている脹相の隣へ、私は腰を下ろしていた。
脹相はいつものように、静かにテレビを見ている。
その横顔を眺めながら、ふと思った。
いつも私が抱きしめられると、脹相の胸元にすっぽり収まる。
そのたびに、彼の腕の中は落ち着くなと思っていた。
けれど、ふと気になったのだ。
抱きしめる側は、いったいどんな感じなのだろう。
「……ねえ、脹相」
「ん?」
「抱きしめてもいい?」
そう尋ねると、脹相は少しだけ目を瞬かせた。
「……今か?」
「うん。嫌?」
「嫌なわけがない」
返事は早かったけれど、どこか戸惑ったようにこちらを見ている。
「なら、いい?」
「ああ」
許可をもらってから、私は立ち上がり脹相の正面へ向き直った。
いつもは彼に抱きしめられる側だから、こうして自分から腕を伸ばすのは少しだけ緊張する。
それでも、両腕を広げた。
「……おいで」
「……俺が行くのか?」
「そうだよ」
脹相は少し迷ったあと、ゆっくりと身体を寄せてきた。
私はその背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめる。
すると、脹相の頭が自然と私の胸元に収まった。
「……っ」
脹相の身体が、ぴたりと固まる。
「どうしたの?」
「……いや」
返事はしたものの、声が少し上ずっていた。
抱きしめる側は、思っていたよりもずっと近い。
脹相の背中が腕の中にあり、頭が胸元にある。
いつも自分が収まっている場所に、今は脹相がいる。
そのことが不思議で、少し嬉しかった。
「苦しくない?」
「苦しくはない」
「じゃあ、嫌?」
「嫌なわけがない」
また即答だった。
けれど、脹相は明らかに落ち着かない。
背中に回した腕の中で、身体がわずかに強張っている。