第11章 頭突き
「……脹相?」
呼びかけても返事がない。
ただ、じっと私を見ている。
その視線が、私の目から頬へ、
そして、一瞬だけ――唇へ落ちた。
「……っ」
脹相自身もそれに気づいたのか、慌てたように視線を逸らした。
「……悪い」
「え?」
「今のは……」
言葉が続かない。
脹相の耳が赤い。
頬まで、ほんのり赤くなっている。
「脹相……?」
「見るな」
「え?」
「……今は、俺の顔を見るな」
珍しく、声が少し掠れていた。
私は思わず笑いそうになる。
「もしかして、照れてる?」
「……違う」
「でも顔――」
「違う」
即答。
けれど、声が明らかに上ずっている。
説得力がない。
脹相は一度目を閉じ、深く息を吐いた。
落ち着こうとしているらしい。
けれど私の肩に置かれていた手が、微かに震えていた。