第10章 俺はリードされっぱなし
「……なあ」
夕食を終えて、二人でソファに並んで座っていたときだった。
脹相が、何か言いたそうにこちらを見ている。
「ん?」
「……少し、相談したいことがある」
「相談?」
「ああ」
いつになく真剣な顔をしている。
私は身体を少し脹相のほうへ向けた。
「どうしたの?」
脹相はしばらく黙っていた。
何度か口を開きかけては閉じる。
やがて、意を決したように。
「……俺は、お前にリードされてばかりだと思うか?」
「え?」
思わず目を瞬く。
「急にどうしたの?」
「……最近、気になっている」
脹相は少し視線を落とす。
「抱きつくのも、キスをするのも……先にするのは、お前のほうが多い」
「そう言われてみれば……」
今までのことを思い返す。
確かにそうかもしれない。
「でも、嫌なの?」
「違う」
返事はすぐだった。
「嫌ではない。むしろ……嬉しい」
「じゃあ、いいんじゃない?」
「……それでも」
脹相は少し困ったように眉を寄せる。
「俺からも、してみたいと思っている」
その言葉に、胸が温かくなる。
「じゃあ、してくれたら嬉しいよ」
「……だが、難しい」
「どうして?」
「……緊張する」
「ふふっ」
「笑うな」
「ごめん。でも、脹相も緊張するんだなって」
「する」
少し恥ずかしそうに答える。
「お前が近くにいると、どうしていいか分からなくなることがある」
「私もだよ」
「……でもか?」
「うん」
私は少し照れながら、脹相の手に自分の手を重ねた。
「私だって、先にするたびに緊張してる」
「…………」
「キスしたいなって思っても、していいかなって考えるし」
「……そうだったのか」
「うん」
そして、脹相の目を見る。
「でも、私が先にできるのはね」
「……?」
「脹相が受け止めてくれるって、信じてるからなんだよ」
「…………」
脹相の表情が止まった。