第9章 一緒に寝たいけど沢山したくなる
そして。
唇が離れる、その直前。
私は少しいたずらをした。
そっと、脹相の唇を舌先でなぞる。
「…………」
脹相が完全に固まった。
「……え?」
目を開けたまま、私を見る。
「ふふっ」
「…………今のは」
耳まで真っ赤になっていく。
「……反則だ」
「嫌だった?」
「違う」
即答だった。
けれど、何を言えばいいのか分からないように黙り込む。
そして、自分の唇へそっと指を触れる。
「……驚いただけだ」
「ふふ」
「……だが」
脹相がちらりとこちらを見る。
「……嫌ではない」
「うん」
「……むしろ」
「むしろ?」
しばらく迷って。
「……またされたら、嬉しい」
「じゃあ、また今度ね」
「ああ」
けれど、脹相は少し困ったように笑った。
「……今日は、もう駄目だ」
「どうして?」
「これ以上されたら……眠れなくなる」
そう言いながら、脹相は私の手を握る。
「……でも」
「ん?」
「今日は一緒に眠れてよかった」
その言葉に、私も笑う。
「私も」
二人で布団に戻る。
手を繋いだまま、並んで横になる。
「おやすみ、脹相」
「……おやすみ」
目を閉じる。
しばらくして。
「…………」
「脹相?」
「……なんだ」
「眠れない?」
「……少し」
「キスしたくなった?」
沈黙。
「…………ああ」
思わず笑う。
「ふふっ」
「……笑うな」
握った手に、少しだけ力が込められる。
「……明日も、していいか?」
「うん」
「……沢山?」
「うん。沢山」
脹相は安心したように小さく笑った。
「……それなら、眠れそうだ」
繋いだ手は、そのまま。
初めて一緒に眠る夜は。
二人とも少し照れながら、穏やかに過ぎていった。