第9章 一緒に寝たいけど沢山したくなる
扉を開ける。
いつもなら、この時間には「おやすみ」と言って、それぞれの部屋へ向かう。
けれど今日は違う。
「……なんだか、変な感じ」
私は少し照れながら脹相のベッドの端に腰を下ろした。
脹相も隣に座る。
「ああ……俺もだ」
付き合っているのだから、一緒に寝ることがおかしいわけではない。
それでも普段よりずっと近い距離にいることを意識してしまう。
「……じゃあ、寝ようか」
「ああ」
二人で布団に入る。
肩が触れそうなくらいの距離。
「…………」
「…………」
脹相は仰向けになったまま、じっと天井を見ている。
「脹相?」
「……なんだ」
「緊張してる?」
「……少し」
思わず笑う。
「ふふっ」
「笑うな」
「ごめん」
私は脹相のほうを向く。
すると脹相もこちらを向いた。
暗い部屋の中で、目が合う。
「……眠れそう?」
「……努力する」
「努力?」
「ああ」
少し間を置いて、脹相が困ったように眉を寄せる。
「……お前が近いから」
「私が?」
「ああ」
そして、少し恥ずかしそうに視線を逸らす。
「近くにいると……キスしたくなる」
胸が小さく跳ねる。
「……今も?」
「……今もだ」
素直な答え。
私は少し笑って、脹相の手を握る。
「じゃあ……していいよ」
「……本当に?」
「うん」
脹相がゆっくり身体を起こす。
一度だけ私の目を見る。
そして、そっと顔を近づけて。
ちゅ。
唇が優しく触れる。
ほんの一瞬。
離れたあと、二人とも何も言わない。
「…………」
「…………」
「……一回だけ?」
私が聞く。
脹相は少し迷ってから。
「……もう一度、してもいいか?」
「ふふっ。いいよ」
二度目。
ちゅ。
今度は少しだけ長い。
離れる。
また目が合う。
「…………」
「……もう一回?」
その後も短いキスを一つ。
また一つ。
気がつけば、最初に「一回だけ」と決めたことなんて忘れていた。
脹相はそのたびに少し照れながらも、離れたあと必ず私を見る。