第8章 したいと思ったから
翌朝。
カーテンの隙間から、柔らかな朝日が差し込んでいる。
いつもと変わらない朝。
けれど、脹相は目を覚ました瞬間から、昨日のことを思い出していた。
――「したいときにしていいよ?」
そして。
――「脹相も、キスしたいと思ってくれてるの?」
「…………」
布団の中で、脹相は目を閉じる。
思い出すだけで、少し頬が熱くなる。
昨日、自分でも気づいてしまった。
自分は、思っていた以上に彼女にキスしたい。
それも、一度や二度ではない。
顔を見れば、声を聞けば、笑ってくれれば、触れれば。
そのたびに、近づきたいと思ってしまう。
「……困ったな」
小さく呟いて、脹相は起き上がった。
キッチンへ向かうと、彼女がいた。
「……あ、おはよう。脹相」
振り返った彼女が笑う。
「……おはよう」
その顔を見た瞬間。
脹相の胸が、どくんと鳴った。
(……したい)
昨日の夜と同じ。
いや。昨日よりも、はっきりしていた。
彼女の顔を見ただけで、そう思った。
「…………」
脹相は一瞬、黙り込む。
(……今、してもいいのか)
昨日なら、ここで迷っていた。
朝だから、突然だから。
驚かせるかもしれないからと思って。
けれど――
昨日、彼女は言ってくれた。
『したいときにしていいよ?』
脹相はゆっくり彼女へ近づいていく。