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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第75章 卒業〜しおり〜


「俺も、お前が作ったものが欲しい」

「……しおり?」

「ああ」

「脹相、本読むもんね」

「読む」

「欲しい?」

「欲しい」

あまりにも素直だったので、私は笑ってしまった。

「じゃあ、待ってて」

そう言って、机の引き出しを開ける。

「……?」

脹相が不思議そうにこちらを見る。

私はそこから、小さな袋を取り出した。

「実はね」

「……?」

「脹相の分、もう作ってある」

袋を開けると、中には、一枚のしおり。

後輩たちのものより少し落ち着いた色で
飾りも控えめ。

何度も使っても折れないように紙は少し厚くしてある。
そして端には、小さく脹相の名前を書いていた。

「……俺の」

「うん」

「いつ作った?」

「後輩のを作り始めた日」

「……」

「脹相も本読むから。欲しいかなって」

脹相は、しおりを受け取ると、指先でゆっくりと表面をなぞる。

「……俺のために?」

「もちろん」

しばらく何も言わない。

「嬉しい」

小さな声だった。

「そんなに?」

「ああ」

脹相はしおりを大切そうに見つめる。

「後輩たちのものを作っているのを見て……俺の分はないのかと思っていた」

「ふふ」

「だから、少し寂しかった」

「ごめんね」

「謝るな」

脹相は首を横に振った。

「俺が勝手に嫉妬しただけだ」

「でも、最初から作ってたよ」

「ああ」

「脹相のこと忘れるわけないじゃん」

「……分かっている」

そう言った脹相の表情が、ようやく柔らかくなり
しおりを自分が今読んでいる本に挟んだ。

「……これでいい」

「何が?」

「これを使う」

「今読んでる本に?」

「ああ」

脹相が本を閉じるとしおりが少しだけ顔を出している。

「これなら、読むたびにお前のことを思い出せる」

「毎日家にいるのに?」

「それでもだ」

真面目な顔で言われて、胸がくすぐったくなる。

「……じゃあ、大事に使ってね」

「ああ」

脹相が頷き、少しだけ迷ってから、私の手を取った。

「ありがとう」

「どういたしまして」

「……お前が俺のために作ってくれたものだから」

握られた手に、少しだけ力が込められる。

「大事にする」

たった一枚のしおりだけれど、それは私にとっても、脹相にとっても。卒業を前にした、二人だけの小さな記念になった。
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