第73章 バレンタイン
中から出てきたのは、一枚の手紙。
脹相が目を通す。
そして。
「…………」
「……な、なんて?」
思わず聞いてしまう。
脹相は手紙を持ったまま、静かに読み上げた。
「『脹相さんへ』」
「う、うん」
「『私たちの憧れの先輩の笑顔を、これからも守っていってください』」
「…………」
「『泣かせたら、私たち許しません』」
「…………」
「『これからも、先輩をよろしくお願いします』」
私はゆっくりと、脹相の顔を見た。
脹相も、手紙を見ている。
そして、ぽつり。
「……熱烈だな」
「…………」
「随分と慕われているらしい」
「…………」
「……脹相」
「なんだ?」
「……私、後輩の子たちに、そんなふうに思われてたんだ……」
「そうらしいな」
「……しかも、脹相に私のこと頼んでる……」
「ああ」
「…………」
「……なんか、恥ずかしい……!」
両手で顔を覆うと、脹相が不思議そうに首を傾げた。
「なぜだ?」
「だって……! 私、そんなに心配されるほど危なっかしいかな……?」
「いや」
脹相は即答した。
「お前は、よく頑張っている」
「……え?」
「学校でも、周りの人間を大切にしているのだろう。だからこそ、こうして慕われている」
「…………」
「俺が守るまでもなく、お前は多くの人間に大切にされている」
そう言って、脹相は手紙を丁寧に封筒へ戻した。
「だが」
彼の手が、私の頬に触れる。
「俺は、お前を泣かせたくない」
「……脹相」
「だから、安心しろ」
真剣な瞳。
いつだって、私のことを真っ直ぐに見てくれる瞳。
「お前が笑っていられるように、俺も努力する」
……もう、本当に
「……ずるいよ、脹相」
「何がだ?」
「……そんなこと言われたら、もっと好きになっちゃう」
私が呟くと、脹相は少しだけ目を細めた。
「……なら、もっと好きになればいい」
「…………っ!」
「俺も、お前をもっと好きになる」
耐えきれなくなって、私は彼の胸に顔を埋めた。
脹相は何も言わず、私の背中をゆっくりと撫でてくれる。
しばらくして、私は顔を上げた。