第73章 バレンタイン
「……脹相」
「なんだ」
「……大好き」
「ああ」
「……脹相は?」
フッと笑いながらも、彼は私を抱き寄せた。
「俺も好きだ」
「……うん」
「愛している」
「…………っ」
「これでいいか?」
私は顔を隠すように、彼の胸にぎゅっと抱きついた。
「……よくない」
「何?」
「……もっと好きになっちゃう」
すると、脹相はほんの少しだけ笑った。
「それは、困ったな」
全然困っていない声だった。
私は改めて紙袋の中を整理しようと、チョコレートをひとつずつ取り出していた。
「これ、すごいね。手作りかな?」
「そうだろうな」
「こっちはラッピングが可愛い……」
「うむ」
「……ん?」
ふと、紙袋の底に、小さな封筒があるのを見つけた。
綺麗な字で書かれた宛名。
『脹相さんへ』
「…………」
手が止まった。
「……脹相」
「ん?」
「……これ」
封筒を差し出す。
脹相は受け取ると、表書きを確認した。
「……俺宛てか?」
「……うん」
「おかしいな……」
そう呟きながら、彼は封筒を裏返した。
差出人の名前はない。
しばらく考えたあと、脹相は封を開けた。
私は、なぜだか息を止めていた。