第72章 年末年始〜大晦日
「お前がそこにいるからだろう」
「僕だって寒いんだよ」
「布団を掛ければいいだろう」
「掛けてるよ」
「なら離れろ」
「えー」
五条がようやく身体を少し起こす。
けれど、腕はまだそのままだ。
「……」
脹相の眉間に皺が寄る。
「その手もどけろ」
「え?」
五条が自分の手を見る。
「ああ、これ?だって僕の方見てくれないしさ~」
「だからといって――」
「家族なんだから、少しくらい近くたっていいでしょ~」
「……」
脹相が言葉を失う。
五条はそんな脹相の顔を見て、さらに楽しそうに笑った。
「え、もしかして」
「……何だ」
「こういうこと、したことなかった?」
「……何?」
「この子に抱きついたこと」
「…………」
「もしかして、触ったこともなかった?」
「五条」
脹相の声が低くなる。
「ごめんごめ~ん」
全然申し訳なさそうではない。
「知らなかったよ」
「そういうことを言っているんじゃない」
「じゃあ、どういうこと?」
脹相は眉間に皺を寄せる。
彼女はまだ眠っている。
その背中に五条がぴったりとくっついていることも。
その腕が彼女を抱きしめていることも。
どうにも気に入らない。
「……恋人の背中に、他の男が抱きついていることが嫌なんだ」
「…………」
五条が一瞬黙る。
そして
「ふーん」
「……何だ」
「嫉妬?」
「……そうだ」
脹相は迷いなく答えると
五条が少し目を丸くする。
「へえ」
「だから、どけ」
「はいはい」
ようやく五条が腕を離す。
そして、彼女から少し距離を取る。
「そんなに怒らなくてもいいじゃん」
「怒るだろう」
「分かったよ」
五条は自分の布団へ戻りながら、楽しそうに笑う。
脹相は再びあなたへ視線を戻す。
そして、肩から落ちていた布団をそっと引き上げ、今度はちゃんと、彼女の肩まで覆う。
「……」
その手を離そうとした時。
「ん……」
彼女が小さく身じろぎした。
そして、眠ったまま脹相の方へ少し身体を寄せる。