第7章 キスはいつしていいんだ?
部屋に戻ってからも。
脹相は、なかなか眠れなかった。
ベッドに横になり、天井を見つめる。
「…………」
今日一日のことを思い返す。一日中を意識していた。
「……キスは、いつしていいんだ?」
自分で言った言葉を思い出して、脹相は顔を覆った。
「……俺は……」
あんなことを聞いてしまった。
けれど、彼女の答えは――
『したいときにしていいよ?』
だった。
「…………」
脹相はしばらく黙っていた。
そして、ふと気づく。
(……したいときに?)
その言葉を頭の中で繰り返す。
したいとき。
では、自分が「したい」と思ったのは、いつだったか。
朝、彼女と目が合ったとき。
「……あれも、したかった」
昼、肩が触れたとき。
「……あのときも」
片付けの最中、すぐ近くで笑いかけられたとき。
「……あれも……」
夕方、彼女が肩に寄りかかってきたとき。
「…………あれも」
脹相はゆっくり起き上がった。
「…………」
そして、しばらく考える。
「……多いな」
ぽつり。
今日だけで何度あっただろう。
数えようとして、途中でやめた。
「…………」
もし彼女の言う通り、
したいと思ったときにしていいのだとしたら。
自分は――
「……一日に何度するつもりなんだ」
自分で呟いて、脹相は固まる。
想像してしまった。
朝、顔を合わせて「おはよう」と言ったあとに。
昼、隣に座ったときに。夜、眠る前に。
それだけではない。彼女が笑ったとき。
名前を呼んでくれたとき。
手を繋いだとき。
嬉しそうな顔を見せてくれたとき。
「…………」
思い浮かべるたびに、胸の奥が温かくなる。
そして。
(……したい)
また思った。