第67章 クリスマス〜クリスマスマーケット
日が暮れると、街はさらに鮮やかになった。
イルミネーションが一斉に灯り、辺り一面が柔らかな光に包まれる。
「……わぁ」
思わず声が漏れた。
目の前に広がる光景に、私は夢中になって見上げる。
「綺麗……」
赤や白、金色の光が木々を彩っている。
その一つ一つを目で追うように、私は何度も顔を上げた。
「すごいね、脹相」
「ああ」
返事が聞こえて、私はまたイルミネーションを見上げる。
けれど、脹相が見ていたのは、私が見上げているイルミネーションだった。
正確には私越しのイルミネーションだった。
光に照らされた横顔。
きらきらと輝く瞳。
嬉しそうに何度も見上げる姿。
脹相は、そんな私を静かに見つめていた。
「……?」
ふと視線を感じて、私は脹相を見る。
「どうしたの?」
「いや」
「イルミネーション、綺麗だよ?」
「ああ」
脹相は頷く。
「綺麗だ」
「ね」
私はまた空を見上げる。
そのまま少し後ろへ身体を倒れるように見る。
すると
「……あ」
後頭部が、脹相の胸に当たった。
「ご、ごめん」
離れようとしたけれど。
「そのままでいい」
脹相の声が頭の上から降ってくる。
「……いいの?」
「ああ」
私は少しだけ迷って
そのまま、そっと寄り添った。
背中越しに伝わる体温が暖かい。
人の多い場所なのに、不思議とそこだけ静かに感じた。
「……あったかい」
「寒かったのか?」
「ちょっとだけ」
そう言うと、脹相の腕が私の身体をそっと包む。
「これなら暖かいだろう」
「うん」
私は胸元に頭を預けたまま、もう一度イルミネーションを見上げる。
視界いっぱいに広がる光。
その後ろには、私を包む脹相の温かさがある。
「……綺麗だね」
「ああ」
今度の脹相の返事は、少しだけ近かった。
脹相がさっきから見ていたのは、イルミネーションよりも。
その光を見て嬉しそうにしている、私だったことに、私は気づかなかった。