第63章 失恋した友達
「でもさぁ……」
友達は腕を組みながら、脹相をまじまじと見つめていた。
「なんで脹相さんって、こう…修行積んだ人みたいなの?」
「……え?」
「だって!」
友達は指を折りながら数え始める。
「束縛しない。ちゃんと心配する。話を聞く。怒鳴らない。疲れてたら甘やかしてくれる。しかも一途!」
「……」
「何なの? 人生何周目?」
脹相は少し困ったように眉を寄せる。
「……さあ」
私はその横で、何食わぬ顔をしてお茶を飲んでいた。
――言えない。
絶対に言えない。
150年も自分と向き合ってきたからかも、なんて
口が裂けても言えない。
そもそも脹相は、人と長く関わってきたわけじゃない。
むしろ、人付き合いそのものにはかなり不器用だ。
気の利いた世間話が得意なわけでもないし、冗談を言われても真面目に受け取ることがある。
感情を言葉にするのだって、決して上手くない。
それなのに自分が大切に思う相手をどう扱うべきか。
どうすれば傷つけずにいられるか。
そういうことだけは、驚くほど真剣に考える。
だからこそ、友達から見ると「恋愛に慣れている人」に見えるのかもしれない。
「たぶん……もともとそういう性格なんじゃない?」
私が適当に誤魔化すと、友達がすぐに食いついた。
「いやいや、もともとってレベルじゃないでしょ!」
「そう、かな?」
「そうだよ!」
友達はまた脹相を見る。
「なんかもう、人生何周かしてきた人みたいな落ち着きがあるんだけど」
「……」
脹相は少し考え込む。
「そう見えるのか?」
「見えますよ!」
「そうか……」
そして、ふと私を見る。
目が合った。
――お願い。
余計なことは言わないで。
脹相は私の意図を察したのか、ほんの少しだけ口元を緩めた。
「……まあ、色々あったからな」
「ほら!」
友達が身を乗り出す。
「やっぱり何かあるんじゃん!」
「いや、その……」
私は慌てて口を挟む。
「長く生きてると、いろいろあるんじゃない?」
「……長く?」
「え?」
「私らと何個かくらいしか違わないのに?」
「んん?」
必死に平静を装う私を、友達は怪訝そうに見る。
けれど、しばらく考えたあと――。
「あ」
「何?」
「分かった」
嫌な予感がした。
友達は、ぽん、と手を叩いた。