第61章 ハロウィン〜猫
高専からの帰り道。
隣を歩く脹相が、ふと私を見る。
「……お前は、配る側なのか?」
「え?」
「今日は皆に菓子を配っていただろう。だが、お前自身は……トリックオアトリートをしていない」
「ああ」
私はくすっと笑った。
「仮装とかは、友達と前にしたことあるんだよ」
「仮装……」
「うん。ハロウィンの日にみんなで集まって。準備してくれてる人には、ちゃんとトリックオアトリートも言うし」
「そうか」
脹相は少し考えるように前を向いた。
「……見てみたいな」
「え?」
「……いや」
ぼそりと呟いた脹相は、それ以上何も言わなかった。
けれど、私は聞き逃さなかった。
――見てみたい。
その言葉が、なんとなく嬉しかった。
だから、家に帰ると、私は少しだけ考えてから自分の部屋へ向かった。
「ちょっと待っててね」
「ああ」
しばらくして戻ってきた私を見た瞬間、
脹相は固まった。
「……」
「どう?」
着ているのは、ふわふわした黒いニット。
それに黒のショートパンツ。
頭には猫耳と
首元には、小さな鈴のついたチョーカー。
ちゃんとした仮装というほどのものではない。
「……ちゃんとしたものじゃないけど」
少し照れながらそう言うと。
「…………」
脹相は何も答えなかった。
「脹相?」
「……待て」
「え?」
「少し……時間をくれ」
「?」
脹相は片手で顔を覆った。
まずい。これはまずい。
朝から「イタズラ」という言葉を意識しすぎていたせいか、普段よりずっと破壊力がある。
黒い服に猫耳。
首元で揺れる小さな鈴。
そして可愛い自分の恋人。
「……似合っている」
やっと絞り出した言葉は、それだけだった。
「ほんと?」
「ああ」
「よかった」
私が嬉しそうに笑う。
それだけで、また胸がキュンと苦しくなる。
すると私は、脹相の前まで歩いてきて
少しだけ首を傾けた。
猫耳がぴょこんと揺れる。
「……トリックオアトリート……ね?」
「…………」