• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第57章 小さな幸せ


「脹相?」

「何だ」

「顔、赤い?」

「赤くない」

即答した。

「ほんと?」

「ああ」

嘘だ。たぶん赤い。
だが、認めるわけにはいかない。

そんな俺を見て、お前は楽しそうに笑った。

(……また笑った)

胸の奥が、じわっと温かくなる。

幸せだ。ただ、それだけだった。

そして、さらに別の日。
今度は足音すらしなかった。
気配だけが近づいてくる。

振り返る前に――

背中に温もりが触れた。

腕が回される。

「…………」

抱きつかれた。
俺の背中に、彼女がぴったりとくっついていて何も言えなくなる。

(…………)

どうしてだ。
どうして、こんなにも嬉しい。

背中に感じる体温。
腰に回された腕。

そこから伝わってくる、お前の存在。
ただ抱きつかれているだけなのに。

(……幸せだ)

心の中で、はっきりと思う。

そして

「脹相」

 肩越しから、ひょこっと顔が出てくる。

「…………」

俺はしばらく何も言えなかった。

最初は、ただ顔を出すだけだった。

それが今は抱きついていて、そのまま俺の名前を呼んでいる。

(……何だ、これは)

幸せすぎる。以前の俺なら、こんなことで胸がいっぱいになるとは思わなかった。

誰かが背後から近づいてくること。

名前を呼ばれること。

抱きしめられること。

今の俺には、ひとつひとつが大切で仕方がない。

/ 309ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp