第55章 俺は愛されている
胸の奥が、ほんの少しだけざわつく。
自分以外の誰かに向けて笑う彼女。
それを想像しただけなのに、指先に少し力が入った。
「……」
嫌だ。
理由は分かっている。
もっと自分のそばにいてほしい。
自分が一番近くにいたい。
その気持ちに気づくと、脹相は眠っている彼女をそっと抱き寄せた。
「……お前は、俺のそばにいてくれ」
小さな声だった。
命令ではない。
ただの願い。
「……できれば、ずっと」
彼女は眠ったまま、無意識に脹相の胸元へ寄ってくる。
その瞬間、脹相の表情がふっと緩んだ。
「……そうか」
安心したように目を細める。
そして今度は、彼女を逃がさないようにするのではなく――
自分から離れたくならないように、優しく抱きしめる。
「……俺も、ずっとお前のそばにいる」
そう呟いて、脹相は彼女の髪に頬を寄せた。
愛されている。
だからこそ、もっと大切にしたい。
そして、できることなら――
この温もりを、自分だけのものにしていたい。
そんな小さな独占欲を胸の奥に抱えながら、脹相は幸せそうに目を閉じた。