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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第54章 名前


「……っ」

「え、どうしたの!?」

「脹相?」

「……可愛すぎる」

「え?」

「名前を呼んだだけなのに……」

指の隙間から赤くなった顔が覗く。

「なんだ、その返事は……」

「どんな返事?」

「『はぁい?』って……」

「だって呼ばれたから」

「……」

 脹相はその場で悶絶するように頭を抱えた。

「可愛すぎる……」

「えぇ……?」

彼女は困ったように笑う。
その横で、恵は呆れた顔をしていた。

「……何やってんだよ」

「恵」

「なんだ」

「お前の言った通りだった」

「何が」

「名前を呼ぶと、こんなに可愛い反応が返ってくる」

「……知らねぇよ」

恵はため息をつく。

「お前が勝手に悶絶してるだけだろ」

「しかし……!」

脹相は顔を上げ、そして、もう一度彼女を見る。

「」

「ん?」

「……」

「はぁい?」

「…………」

また両手で顔を覆う。

「脹相!?」

「無理だ……」

「何が!?」

「可愛すぎて無理だ……」

恵が深々とため息をついた。

「だから呼べばいいって言っただろ」

「こんな破壊力があるとは聞いていない」

「知らねぇよ」

「……恵」

「今度はなんだよ」

「ありがとう」

「礼言われるほどのことしてねぇ」

「いや、ありがとう」

脹相は真剣だった。

もうこれからは、名前で呼ぶ。何度でも。

呼ぶたびに彼女がこんなふうに嬉しそうに返事をしてくれるのなら――

「」

「なぁに?」

「……好きだ」

「ふふ、急にどうしたの?」

「……名前を呼ぶと好きだと伝えたくなる」

「もう……」

彼女が照れたように笑う。
それを見て、脹相は再び胸を押さえた。

「……やはり可愛い」

「もう!」

恵はそんな二人を横目に見て、静かに立ち上がった。

「俺、帰るわ」

「え、もう?」

「十分見た」

「何を?」

「……何でもねぇよ」

呆れたような声。
けれど、その口元はほんの少しだけ緩んでいた。
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