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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第54章 名前



「ただいまー」

彼女が帰ってきた。
脹相の心臓が、どくん、と大きく鳴る。

「おかえり」

「ただいま。あれ、恵いたんだ」

「おう」

彼女は買ってきた袋をテーブルに置きながら、にこにこと恵と話している。

その姿を見つめながら、脹相は先ほどの会話を思い出していた。

 ――試しに呼んでみれば?

名前。

ただ名前を呼ぶだけだ。
何も難しいことではない。

…なのに

「…………」

 なぜか緊張する。

「脹相?」

「!」

 彼女に呼ばれて、脹相は顔を上げた。

「どうしたの? さっきからぼーっとしてるけど」

「いや……」

「そっか?あ、そうだ恵、ちょうど五条さんに渡してほしいものが…」

「え、やだよ、めんどくさい」


名前を…

呼んでみる。

そう思ったが、脹相は一度、唇を閉じた。

そして小さい声で呟く。

「……」

「はぁい?」

ぱっと顔を上げる彼女に、脹相の動きが止まった。

「……」

「どうしたの?」

首を少し傾げる。

「なぁに?」

にこ、と笑う。

 ――可愛い。

脹相の脳内が一瞬で真っ白になった。

「…………」

「脹相?」

「…………」

「?」

彼女は不思議そうにこちらを見ている。

脹相は耐えられなかった。

顔を両手で覆う。
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