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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第6章 初めてのキス


ほんの一瞬。
触れるだけの、柔らかなキス。
あまりにも優しくて。
一瞬で離れてしまったことが、少しだけ寂しく感じるほどだった。

脹相もすぐには離れなかった。

唇が離れたあとも、額を合わせたまま。

お互いに何も言わない。
ただ、近すぎる距離で相手の顔を見つめている。

「…………」

「…………」

脹相が、照れたように視線を伏せた。

声が出ない。

何か言わなくちゃと思うのに、言葉がひとつも浮かばなかった。

さっきまで聞こえていたはずの時計の音も、遠く感じる。

自分の心臓だけが、やけに大きく聞こえていた。

どくん。

どくん。

こんなに緊張するものだとは思わなかった。

唇に残っている、ほんのわずかな感触。

触れたのは一瞬だったのに、その一瞬が何度も頭の中で繰り返される。

私は恥ずかしくなって、少しだけ俯いた。

すると、脹相の指先が頬を離れる。

その瞬間――

少しだけ、寂しくなった。

離れたくない。

そう思ったのが、自分でも分かってしまって、さらに顔が熱くなる。

「……大丈夫か?」

脹相の声がする。

「……うん」

「顔が赤い」

「脹相も赤いよ」

「……そうか」

そう言って、脹相が少し困ったように笑う。

その笑顔を見たら、なんだか安心した。

自分だけじゃない。

脹相も同じように緊張して、同じように照れている。

それが嬉しかった。


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