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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第52章 心の準備ができた


それから、しばらく経ったある夜。
二人でソファに並んで座っていると、ふと脹相が口を開いた。

「……なあ」

「ん?」

「前に言っていただろう」

少しだけ間を置いて、脹相がこちらを見る。

「俺の心の準備ができたら、と」

「ああ……うん」

その話を思い出して、私も少しだけ緊張する。

「……今でも、そう思っているか?」

「もちろん。急がなくていいよ」

そう答えると、脹相は小さく頷く。

「……そうか」

それから少し黙って、今度はもう一度聞く。

「本当に……嫌ではないのか?」

「嫌じゃないよ」

「無理をしているわけでも?」

「してないよ」

脹相は私の顔をじっと見つめる。
その表情には、まだ少し緊張が残っている。

「……そうか」

「どうしたの?」

「いや……」

脹相は一度視線を落とし、それからゆっくり息を吐いた。

「ずっと考えていた」

「何を?」

「お前を大切にしたいと思っている。だから、勢いで何かをするのは違うと思っていた」

「……うん」

「でも」

そこで脹相が、今度は目を逸らさなかった。

「いつまでも怖がっているのも違うと思った」

胸が小さく跳ねる。

「だから……」

脹相が少しだけ私との距離を縮める。

「……今なら、大丈夫だと思う」

「……脹相」

「まだ緊張している」

少し照れたように、脹相が笑う。

「だが、もう逃げたいとは思わない」

その言葉に、私も自然と笑顔になる。

「じゃあ……心の準備、できたんだね」

「ああ」

脹相は頷く。

「……俺から言いたかった」

「どうして?」

「お前にまっていてもらったから」

そして、少しだけ恥ずかしそうに視線を逸らしてから、

「……だから、今度は俺が言う」

再びこちらを見る。

「……見てもいいか?」

私は小さく頷く。

「うん」

脹相はそれ以上急がず、ただ安心したように息を吐いた。

「……ありがとう」

その声は、いつもの脹相より少しだけ柔らかかった。

脹相は繋いだ手をそっと握ったまま、私を見つめていた。

「……本当に、いいんだな?」

「うん」

私が微笑むと、脹相もほんの少しだけ表情を和らげる。
それから、ゆっくりと顔を近づけてくる。

触れるだけの、短いキス。
離れたあとも、脹相はすぐには距離を取らなかった。

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