第50章 3日間の我慢〜3日目
三日目の朝。
窓の外が少しずつ明るくなってきた頃。
私は机の上に広げていた参考書を閉じた。
「……うん。もう十分かな」
ここ数日、かなり勉強した。
これ以上詰め込んでも、かえって頭が疲れてしまいそうだった。
家を出るまで少し時間はある。
「……脹相、まだ寝てるかな」
ふと思い立って、私は自分の部屋を出た。
三日間。
ずっと別々の部屋で眠っていた。
昨夜は少しだけ顔を合わせたけれど、
脹相はかなり眠そうだった。
今なら、まだ寝ているかもしれない。
私は静かに脹相の部屋の扉を開けた。
「……」
やっぱり、眠っていた。
布団の中で静かに眠る脹相。
少し乱れた髪。
いつもより無防備な寝顔。
私はそっとベッドのそばへ腰を下ろした。
「脹相」
返事はない。
まだ眠っている。
私はそのまま手を伸ばして、脹相の頭を撫でた。
さらりと髪が指に通り、それを楽しむようにゆっくりと撫でる。
「……」
脹相は少しだけ眉を動かしたけれど起きない。
私は小さく笑う。
「昨日、眠そうだったもんね」
もう一度、頭を撫でる。
すると――
「……ん」
脹相が小さく声を漏らした。
目はまだ閉じたまま。
けれど、私の手を追うように頭が少し動く。
「ふふ」
私はそのまま髪を撫で続ける。
「気持ちいい?」
「……お前……」
寝ぼけた声。
「あ、ごめんね、起こしちゃった?」
そう答えると、脹相はゆっくり目を開けた。
けれど、まだ完全には起きていないらしい。
ぼんやりと私を見ている。
「……また、夢か」
「夢じゃないよ」
「……そうか」
そう言ったはずなのに、脹相の目はまだ夢の中にいるようだった。