第6章 初めてのキス
「じゃあ……また明日!」
部屋の扉の前まで来て、私は振り返った。
一緒に暮らしているから、明日もまた顔を合わせる。
それなのに、なぜだか少しだけ寂しい。
「……ああ。また明日」
脹相がそう答えたあと、ほんの少し腕を広げた。
その仕草を見て、私は自然に彼の胸元へ歩み寄る。
ぎゅっ。
脹相の腕が、優しく背中に回る。
「……」
「……」
いつものハグ。
付き合い始めてから、何度もしている。
それなのに今日は、なかなか離れられなかった。
もう寝る時間なのに。
明日になれば、また会えるのに。
それでも、もう少しだけこのままでいたい。
私がそっと脹相の服を掴むと、脹相も何も言わず、抱きしめる腕を少しだけ強める。
やがて、名残惜しさを感じながらゆっくり身体を離した。
「……じゃあ」
「……ああ」
一歩離れようとする。
けれど――
脹相も同じように離れたはずなのに、完全には距離が開かない。
そして…こつん。
「……え?」
脹相の額が、私の額にそっとぶつかった。
思わず瞬きをする。
すぐ目の前に、脹相の顔。
こんなに近いのに、彼は慌てる様子もなく、ただ穏やかにこちらを見ている。
「……おやすみ」
低くて、優しい声。
その一言が、胸の奥にすっと入ってくる。
「…………」
なんだろう。
さっきまで普通に「また明日」と言えていたのに。
今は、離れたくない。
額が触れているだけなのに、脹相の温度が近くて、
そのまま見つめていると、胸の奥がどんどん熱くなっていく。
そして――
どうしても、キスしたくなった。