第47章 挟まれる
(……困ったな)
脹相は静かに息を吐き、
足を動かそうと試みる。
ほんの少しだけ。
すると、ぎゅ。っとお前の足がそれを追うように動いた。
「…………」
止まる。
(……離さないのか)
思わずそう考えてしまう。
もちろん、そんな意思があるわけではないことは分かっている。
眠っているのだから。
それでも、まるで「ここにいて」と言われているような気がしてしまう。
(…………)
脹相は目を閉じる。
(考えるな)
無心になれ。
何も考えずに眠ればいい。
ただ足を挟まれているだけで
それ以上でも、それ以下でもない。
深呼吸する。
(…………)
だが意識を逸らそうとすると、逆に足に伝わる温度が気になってくる。
お前の寝息。布団の中の温かさ。
すぐそばにいる気配。
そして、俺の足を包むようにしているお前の足。
(…………幸せだ)
不意に、そんな言葉が浮かんだ。
脹相は目を開ける。
(……幸せ?)
自分で思っておきながら、少し驚く。
だが否定できなかった。
困っている。確かに困っている。
足は動かせないし姿勢も変えにくい。
このままでは眠りづらい。
それでも。
(……幸せだ)
もう一度思う。
こんなにも無防備に、自分の隣で眠っている。
しかも、無意識に俺へ寄ってきている。
それだけで、胸の奥が満たされていく。
(……俺のところが、安心する場所なのか)
そう考えると、さっきまでの困惑が、少しずつ別のものに変わっていく。
仕方がない、今夜くらいは、
俺の足を好きなだけ使えばいい。
(……起こすのは可哀想だ)
そう結論づける。
そして、動かすことを諦め、
足を挟まれたまま、再び目を閉じる。
(……無心だ)
何もも考えずに眠る。ただ、それだけだ。
なのに。しばらくすると、お前が小さく身じろぎした。
そしてさらに身体を寄せてくる。
「…………」
脹相は無言のまま天井を見た。
(……近い)
けれど。今度はもう、逃げようとは思わなかった。
むしろ。
(……このままでいい)
そう思ってしまう。
困る。本当に困る。
だが、眠っているお前が俺を求めるように寄ってきてくれることを、嫌だと思えるはずがない。
だから俺は、そのまま朝まで動かなかった。