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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第45章 物置で


物置の奥。

私は脚立代わりに小さな箱へ足をかけ、棚の上に置いてあるものへ手を伸ばしていた。

「……あと、少し……」

指先が箱の端に触れたその瞬間だった。

「何をしている」

「え?」

背後から聞こえた低い声。

振り返るより先に、脹相の腕が私の脇へ入った。

「危ないから降りろ」

「でも、これくらいなら――」

「いいから」

ぐっと身体が持ち上がる。

「わっ……」

脹相は私を軽々と抱き上げ、そのまま床へ下ろそうとした。
しかし、持ち上げた瞬間。彼の手が、膨らみに触れた。

「…………」

「…………」

一瞬。脹相の動きが止まった。
ほんのわずかな時間だったから、私は気づかなかった。

「俺が下ろすから、避けておけ」

「う、うん?」

脹相は何事もなかったかのような顔で私を床へ下ろす。
そして棚を見上げた。

「どれだ」

「え? あ、それ……」

「分かった」

脹相は私が取ろうとしていたものを、いとも簡単に手に取った。

「ほら」

「ありがとう」

「危ないことはするな」

「うん……」

それだけ言うと、脹相は何事もなかったように物置を出ていった。

――ただし。

脹相本人の中では、まったく何事もなかったわけではなかった。

(…………何だ、今の)

廊下を歩きながら、脹相は無表情のまま自分の手を見る。

(何に触れた)

考えるな。
そう思った。

(俺が考える必要はない)

ただ抱き上げただけで
危険だったから助けただけ。

それだけだ。

(…………なのに)

手のひらに残った感触が、妙に鮮明だった。

柔らかくて。
ムニ、と。

確かに何かを掴んだ。

「…………」

脹相はぎゅっと手を握った。

そして、開く。

「…………」

もう一度、握り開く。

(やめろ)

自分自身に言い聞かせる。

(考えるな)

なのに。

(……あの感触は)

脳裏に蘇る。

また手を握って開く。

握り、開く。

そんなことを繰り返しているうちに

「脹相?」

「…………!」

背後から声がした。

振り返るとそこには彼女が立っていた。

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