第44章 留守番
「……」
彼女の部屋。
机の上には、途中までやっていた勉強道具。
ベッドには、彼女の枕がある。
「……」
脹相はゆっくり中へ入った。
入っていいと言われている。
だから、これは悪いことではない。
そう自分に言い聞かせ、ベッドの端に腰を下ろした。
「……」
静かだ。
彼女がいないから当然なのに。
それが妙に寂しい。
脹相はそっと枕に触れる。
「……」
フワッと好きな香りがすると、胸の奥がきゅっとなる。
「……やはり、ここはお前の部屋だな」
当たり前のことを呟く。
枕に残る香り。
布団に残る気配。
ここで彼女が眠っていると思うと、少しだけ安心する。
「……」
脹相はそのままベッドに横になる。
以前なら、香りを意識しすぎてここでは眠れなかった。
彼女のことを考えすぎてしまうから。
けれど今日は
「……寂しかったからな」
言い訳するように呟く。
「少しくらい、いいだろう」
目を閉じる。
すると、彼女の顔が浮かぶ。
笑った顔。
眠そうな顔。
自分に向かって「おいで」と言う時の顔。
「……」
脹相は小さく笑う。
「早く帰ってきてほしい」
誰もいないから、素直に言える。
「……お前がいないと、つまらない」
しばらくすると、少しずつ眠くなってくる。
彼女の香りに包まれているのに。
今日は、不思議と心が落ち着いた。
寂しさを埋めてくれるからだろう。
「……」
脹相は枕を抱えるようにして、目を閉じる。