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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第42章 少し引きずる脹相



「……」

思い当たることが、いくつもある。

俺が少し疲れているだけでも、すぐに気づく。
俺が何も言わなくても、「大丈夫?」と聞いてくる。

それなのに、自分が無理をしていることにはなかなか気づかない。

「確かにね」

野薔薇が頷く。

「自分がどう見られてるかとか、自分がどう思われてるかとか、そういうところには無頓着なのよね」

「そうそう!」

悠仁も笑う。

「でも、そういうところがらしいよな!」

恵は少し黙ってから、ぽつりと言った。

「……まあな」

そして、少しだけ視線を逸らす。

「自分がどう見られるかとか、あんまり気にしないだろ。人のことばっかり気にして、自分のことは後回しにするし」

「確かに」

悠仁が頷く。

「変に格好つけたりもしないしな」

「ああ」

恵は短く答える。

「……そういうところは、男らしいんじゃないか」

「男らしい……」

俺は心の中で、その言葉を繰り返した。

男らしい。

恵が言いたいのは、きっと飾らないところや、自分より周りを優先するところなのだろう。

けれど昨日のことが、ふと頭をよぎった。
浴室の扉を開けた瞬間。

目が合った時、俺はすぐに視線を逸らした。

そのあとも、あいつはいつも通りに話していた。

俺だけが意識してしまっていた。

そして最後には、

『脹相の心の準備ができたらね』

そう言って、笑っていた。

「……」

もしかすると昨日のことも、当てはまるかもしれない。

あいつは、人の気持ちには敏感なのに。
自分のことになると、鈍い。

だから俺が思っているほど、あいつは気にしていないのかもしれない。

俺だけが、必要以上に意識しているのかもしれない。

「……」

そう考えると、少しだけ肩の力が抜けた。

「脹相?」

恵の声で我に返る。

「……何だ?」

「さっきから黙ってるけど」

「ああ……」

俺は少しだけ笑った。

「何でもない」

昨日のことは、やはり誰にも話さなくていい。

これは俺とあいつの間だけに置いておけばいい。

ただ――。

恵の言葉を思い出す。

そういうところは、男らしいんじゃないか。

俺は小さく息を吐いた。

……確かに。

あいつらしいのかもしれない。

そして、そう思った途端。

昨日より少しだけ、あいつのことが愛おしく感じられた。
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