第41章 朝のシャワー
脱衣所の扉が開き、私は髪をタオルで拭きながら、
いつものTシャツとショートパンツ姿で出た。
「……」
リビングにいた脹相が、こちらを見る。
「……っ」
けれど、ほんの一瞬で、視線が逸れた。
「?」
私は足を止める。
「脹相?」
「……なんでもない」
返事が妙に早い。
私は不思議そうに首を傾げながら、ソファのほうへ歩いていく。
その間も、脹相はなぜかこちらを見ようとしない。
いつもと変わらない、見慣れた服なのに
脹相の頭には、さっき浴室で一瞬だけ見てしまった姿が浮かんでいた。
今、目の前にいるのはいつもの私。
ちゃんと服を着ている。
それなのに、さっきの記憶と重なってしまう。
「……」
脹相はそっと息を吐いた。
駄目だ。
意識してしまう。
「脹相、どうしたの?」
「……いや」
「さっきから目、合わせてくれないけど」
「……合わせると、また思い出してしまいそうで」
「……え」
脹相は言ってから、自分で何を口にしているのか気づいたように黙り込む。
耳が赤い。
私も、少し遅れて意味を理解する。
「……さっきのこと?」
「ああ……」
「……」
急に恥ずかしくなって、私も視線を逸らす。
「……そっか」
「……すまない」
「なんで謝るの?」
「いや……」
脹相は困ったように眉を下げる。
「今までその格好で歩いていても、何とも思わなかったのに、急に意識してしまっている自分が……少し困る」
その言葉に、胸が小さく跳ねた。
私だって同じだった。
さっきまでは何でもなかったのに。
今は、脹相が私を見るだけで少し緊張する。
「……じゃあ」
私は照れ隠しに笑う。
「お互い、ちょっと慣れるまで大変だね」
「……ああ」
そう答えた脹相は、やっぱりまだ私の顔をまともに見られない。
そんな様子がおかしくて、私は小さく笑った。
けれど私のほうも、頬が熱くなっているのを隠せなかった。