第39章 オムライス弁当
「何騒いでんだ」
「恵……助けて」
「?」
私が事情を説明すると恵は脹相の弁当を見る。
「……ハート」
「そう」
「……」
そして五条を見る。
「からかってんのか」
「もちろん」
「くだらねぇ」
そう言って立ち去ろうとした恵が、ふと脹相を見る。
「でもまあ」
「?」
「お前、嬉しそうだな」
脹相は一瞬黙った。
「ああ、嬉しい」
素直にそう頷く脹相を見て、私は恥ずかしさが少しだけ薄れる。
「……じゃあ、ちゃんと食べてね」
「ああ。全部食べる」
五条がまた笑う。
「いやぁ、いいねぇ」
「五条さん」
「はい?」
「もう絶対見せないからね」
「えー」
「今度から袋に入れる」
「それでも僕が見つける」
「なんで!?」
「保護者だから」
「関係ないよ!」
「あるよ」
五条は楽しそうに笑った。
「君が幸せそうなら、僕はそれで満足だからね」
「……」
一瞬、優しい言葉に聞こえた。
けれど。
「まあ、面白いからもっとからかうけど」
「やっぱり五条さん嫌い!」
「ひどっ!」
脹相はそんな二人を見ながら、弁当を大事そうに抱えていた。
そして誰にも聞こえないくらい小さな声で。
「……ハート、嬉しい」
と呟いた。