第38章 逃げる
「……お前が嫌だと言わない限り」
耳元で、脹相が静かに言う。
「俺はそばにいる」
「うん」
「触れたくなったら…触れてもいいのか?」
「もちろん」
「それは嬉しいな」
「ふふ」
脹相が小さく笑った。
「それなら……安心した」
私は彼の胸元に頬を寄せる。
しばらくすると、脹相の手が私の髪をゆっくり撫で始めた。
眠りへ誘うような、優しい触れ方。
「……おやすみ」
「おやすみ、脹相」
目を閉じると、額に柔らかな感触が落ちた。
脹相からの、短いキス。
「……これも、いいんだな」
「うん……」
眠くなって、声が小さくなる。
「いつでも……」
「……ああ」
脹相の腕が、もう一度優しく締まる。
以前なら、私を大切にしたいからこそ離れていた。
けれど今夜からは違う。
我慢するために離れるのではなく
大切にするために、そばにいる。
そんなふうに、脹相は私の隣にいることを選んでくれた。