第38章 逃げる
「起こしたくなかったから」
「じゃあ、私が気づいてなかっただけ?」
「ああ」
「いつから?」
「……最近だ」
私は少しだけ寂しくなる。
「なんで、夜中にシャワー浴びるの?」
脹相が黙り、やがて、観念したように息を吐いた。
「……冷静になるためだ」
「冷静?」
「ああ」
脹相は濡れた髪をタオルで拭きながら続ける。
「お前と一緒に眠ると……どうしても意識してしまう」
「……」
「隣にいるのが嬉しい」
そう言って、少しだけ目を伏せる。
「だから、もっと近くにいたいと思ってしまう」
私は黙って聞く。
「だが、お前が眠っている時に勝手に触れるのはよくないと思った」
「……」
「だから、いったん離れて、シャワーを浴びて頭を冷やしていた」
「それでその後戻ってきてたの?」
「ああ」
「……何も知らなかった」
「起こしたくなかったからな」
脹相は少し困ったように笑う。
「お前が気づかないうちに戻れば、それでいいと思っていた」
私は脹相の服の裾をつまむ。
「……?」
「何度もそんなことしてたなんて、知らなかった」
「すまない」
「怒ってるんじゃないよ」
首を振る。
「ただ、起きた時に脹相が隣にいないと、ちょっと寂しい」
脹相が私を見る。
「……そうか」
「うん」
「なら、今度からはちゃんと伝える」
「シャワーに行く時?」
「ああ」
「でも……」
私は少し笑う。
「そんなに冷静にならなくてもいいんじゃない?」
「……それは難しい、眠れないんだ。」
「そうなの?」
「お前が隣にいると、どうしても嬉しくなるからな」
そう言って、脹相が私の手を取る。
「……だが、寂しくさせるのは嫌だ」
「じゃあ、一緒に寝よう?」
「ああ」