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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第5章 初めてのハグ


ある日、朝食を済ませ、支度を終えた脹相が玄関に立つ。

「じゃあ、行ってくる」

「うん。いってらっしゃい」

いつも通り脹相が玄関のドアに手をかける。
その背中を見送って――なぜか、急に寂しいと思った。

「……脹相」

「ん?」

呼び止めると、脹相が振り返る。
私は少し迷ってから、口を開いた。

「……あのさ」

「どうした?」

「……いってらっしゃいのハグ、してもいい?」

「……」

脹相が固まった。

「……えっと」

「……」

「嫌だった?」

「いや」

すぐに否定する。

「そういうわけではない」

「じゃあ……」

「ただ……」

脹相が少しだけ視線を逸らした。

「……ハグ、か」

「うん」

「改めて抱きしめるのは初めてだな」

「そうだね」

脹相は、少し考えるように黙り込んだ。

今まで身体を寄せ合ったときは、眠るためだったり、運んでもらうためだったりした。

けれど今は違う。恋人として、自分の意思で抱きしめる。
その違いを、脹相も感じているようだった。

 やがて、脹相が小さく息を吐く。

「……分かった」

そう言って、こちらへ歩いてくる。
あと一歩。その距離で、脹相が止まった。

「……どうすればいい?」

「え?」

「こういうのは……初めてだから」

思わず笑ってしまう。

「私も初めてだよ」

「そうか」

「じゃあ……普通に」

そっと腕を広げると、脹相も少し遅れて腕を上げる。

そして――ぎゅ。っと、胸元に身体が触れた。

「……」

今まで身体を寄せたときと、距離だけなら似ているはずだった。
それなのに、これは全然違う。
眠るために預けていた身体を、今は自分の意思で彼に預けている。

脹相の腕が、背中にゆっくり回る。
最初は遠慮がちだったそれが、少しずつ力を増していく。

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