第4章 手を繋ぎたい
帰り道。
夕方になり、街に少しずつ明かりが灯り始めていた。
今日は楽しかったね、なんて話しながら歩いていると、ふと隣から視線を感じる。
「どうしたの?」
「……いや」
「また?」
「……」
脹相は何か言いたそうにしていけれど結局、何も言わない。
「今日、変な脹相」
「……自分でもそう思う」
「ふふ」
すると突然、脹相が足を止めた。
「……なあ」
「ん?」
「もう一度、してくれないか」
「何を?」
「……手を」
一瞬、意味が分からなかった。
けれど脹相が私の手を見ているのに気づいて、胸が少しだけ熱くなる。
「……繋ぎたいの?」
「……ああ」
今度は脹相のほうから、素直に頷いた。
「もう一度、してほしい」
私は笑って、そっと彼の手を取った。
指先が触れそのまま手のひらを重ねる。
すると今度は、脹相が自分から指を絡めてきた。
「……」
「……脹相?」
「こうすると……もっと恋人らしい気がする」
「今さら?」
「今さらだ」
真面目な顔で答えるから、また笑ってしまう。
「じゃあ、これからいっぱい練習しないとね」
「練習?」
「恋人らしいこと」
「……」
脹相が黙り込む。
「どうしたの?」
「……お前は、時々すごいことを言うな」
「え?」
「いや……何でもない」
そう言って、繋いだ手を少しだけ強く握る。
帰る道は、いつもと同じだった。
けれど今日は、何度も繋いだ手を見てしまう。
私もたぶん、脹相も。
付き合う前から、何度も触れた手。
それなのに今は、まるで初めて触れたみたいに特別だった。
「……なあ」
「ん?」
「明日も、繋いでいいか」
「もちろん」
「……そうか」
安心したように、脹相が小さく笑う。
そして帰り道の最後まで、私たちは手を離さなかった。