第37章 媚薬
「なにその顔」
「何のことだ」
「いやぁ?」
五条がにやにやする。
「僕の可愛い保護対象を取られて、ちょっと悔しいなぁと思ってたけど」
「五条」
「ん?」
「俺は取ったつもりはない」
「そういうところだよ」
五条は肩をすくめる。
「まあ、本人が自分からくっついてるなら仕方ないか」
そして、私の頭を撫でる代わりに、少し離れたところから手を振った。
「じゃあね。今日はちゃんと休むんだよ」
「うん」
「おやすみはまだ早いけど、お大事に」
「ありがとう」
五条はそれだけ言うと、今度こそ廊下の奥へ歩いていった。
数歩進んだところで、ふと振り返る。
私が脹相の腕にくっついているのを確認すると、安心したように小さく笑った。
「……ちゃん自分の気持ちを言えるようになったんだね」
その呟きは、私たちには届かなかった。