第37章 媚薬
集落を出て、周囲に人の姿がなくなった頃。
脹相が私の手を握り直した。
いつもの帰り道と同じように、指を絡める。
「……大丈夫か?」
「うん」
「まだ熱いか?」
「ちょっとだけ」
「無理をするな」
「うん……」
繋いだ手が温かい。
それだけで少し落ち着くはずなのに、今日はそれだけでは足りない。
私は隣を歩く脹相を見上げた。
「……脹相」
「なんだ?」
「もう少し近く歩いていい?」
「いつも近いだろう」
「今日はもっと……」
言いかけて、自分で恥ずかしくなる。
すると脹相は少しだけ目を細めて、私を自分のほうへ引き寄せた。
肩が触れる。
「これでいいか?」
「……うん」
それからしばらく、二人で手を繋いだまま歩いた。
何度も脹相を見てしまう。
視線に気づいたのか、脹相がこちらを見る。
「……また見ているな」
「見てない」
「見ていた」
「……少しだけ」
すると脹相は、ほんの少しだけ口元を緩めた。
「そうか」
どこか嬉しそうだった。