第37章 媚薬
「私……脹相さんのこと、気に入ってしまって……」
「……俺を?」
「はい……。優しくて、格好よくて……。それで、飲ませたら私のことを好きになってくれるんじゃないかって……」
孫娘は震える声で続けた。
「そうしたら、ここに残ってもらえると思って……。だから……」
そこで、ちらりと私を見る。
「まさか、あなたが飲むとは思わなくて……本当にごめんなさい」
脹相の表情が険しくなる。
「俺には効いていないようだな?」
「……はい」
「そうか」
脹相は深く息を吐いた。
「任務中の人間に、訳の分からないものを飲ませるな」
「はい……」
「それに――」
脹相は私のほうを見る。
まだ赤い顔で、自分の袖を握っている私を見て、わずかに眉を下げた。
「俺には、すでに好きな相手がいる」
「……!」
孫娘が目を見開く。
そう言って、脹相は私の手を取った。
「……脹相」
「だから、残る理由もない」
孫娘はしばらく黙っていたが、やがて深々と頭を下げた。
「……本当に、ごめんなさい」
「二度とするな」
「はい……!」