第36章 カラオケ
『この動画は誰が撮った?』
しばらくして返信が来る。
『釘崎。俺は送られてきただけだ』
脹相は少しだけ安心した。
だが、続けてメッセージが届く。
『釘崎が脹相に送れって』
「……?」
どういうことだ。
脹相が画面を見ていると、さらに伏黒からメッセージが届いた。
『あと、伝言』
そして、その下に。
『「あんたの恋人、私のこと大好きなんだって。羨ましいでしょ!」だそうだ』
「…………」
脹相は無言になった。
しばらくして、ぽつり。
「……野薔薇……」
伏黒が自分の判断でこんなことを言うはずがない。
間違いなく、釘崎が言わせている。
しかも――。
「……完全に煽っているな」
そう呟きながらも、脹相の頬は少しだけ膨らんでいる。
確かに、彼女が野薔薇に「大好き」と言っている。
クラスメイト同士なのだから、それ自体は何もおかしくない。
分かっている、けれど。
「……俺の恋人なんだが」
ぽつりと呟く。
そして、もう一度動画を再生する。
彼女がカメラ目線で笑う。
くしゃっとした、いつもの大好きな笑顔。
「……可愛い」
思わず口元が緩む。
けれど、その直後に野薔薇の言葉を思い出して、また少し拗ねる。
「……羨ましいのは、確かに否めない…」
そのとき、玄関のドアが開いた。