第36章 カラオケ
ある日の夕方。
脹相がスマホを見ていると、伏黒恵から一件の動画が送られてきた。
「……伏黒から?」
珍しい。
何だろうと思いながら再生する。
すると画面に映ったのは、見慣れた顔だった。
「……!」
どうやら今日は野薔薇とカラオケに行っているらしい。
画面いっぱいに映るあなたは、楽しそうにマイクを握っている。
恋愛の曲を歌っているらしく、
歌詞に合わせて時々カメラを見る。
「……好き」
カメラ目線で、そう口ずさむ。
「……」
脹相の手が止まった。
さらに彼女がカメラを見つめる。
「私を見て」
少し恥ずかしそうに笑う。
「……」
脹相は完全に見入っていた。
歌っているあなたは、
普段一緒にいるときとは少し違って見える。
楽しそうで、少し照れていて、
それでもカメラに向かって、まっすぐ笑っている。
特に、ふとした瞬間に見せる、くしゃっとした笑顔。
「……可愛い」
思わず声が漏れる。
画面の中の彼女が笑うたびに、胸の奥が妙に温かくなる。
ところが、ふと、脹相の表情が止まった。