第35章 帰ってきたら
「……」
スマホを握る手に力が入る。
電話をかけようか。
けれど、何度も鳴らして迷惑だったら。
そう考えてしまう。
自分でも呆れるほど、弱気になっていた。
「……俺は」
ぽつりと呟く。
「……何をしているんだ」
一日離れるだけで、こんなにも不安になる。
朝からあれほど帰りたがっていたのも、彼女の顔を見たかったからだ。
帰れば抱きしめてもらえると思っていた。
なのに誰もいない。
脹相は俯いた。
静かな家が、今はひどく広く感じる。
そのとき玄関から、鍵の回る音がした。
「ただいまー」
聞き慣れた声。
「……!」
脹相が勢いよく立ち上がり、玄関へ向かう。
そこには、両手いっぱいに買い物袋を抱えた彼女が立っていた。
「あれ?」
目が合う。
「脹相?」
次の瞬間、買い物袋を床に置くより早く、私は抱きしめられていた。