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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第35章 帰ってきたら



朝から、脹相は明らかに機嫌が悪かった。
正確には、機嫌が悪いというよりひどく気が重そうだった。

「……行きたくない」

 朝食を終えても、出かける準備をしながらも、何度もそう呟いている。

「仕方ないでしょ。任務なんだから」

「分かっている」

「一日だけなんだから」

「ああ」

「……そんなに嫌?」

 尋ねると、脹相は少し黙った。

「お前と離れるのが嫌だ」

 あまりにも素直に言われて、私は思わず笑ってしまう。

「すぐ終わるかもしれないよ?」

「一日と言われた」

「じゃあ、少しでも早く終わらせて帰ってくればいいじゃん」

「……努力する」

 玄関まで見送りに行く。

 靴を履き終えた脹相が、名残惜しそうにこちらを見る。

「じゃあ、行ってくる」

「うん。気をつけてね」

「……」

 脹相が動かない。

「どうしたの?」

「……帰ってきたら」

「うん?」

「沢山、くっついてもいいか」

 その言い方があまりにも真剣で、私は笑いながら頷いた。

「もちろん。いっぱいくっついていいよ」

「……そうか」

「だから、安心して行っておいで」

 私は背伸びをして、彼の頬に軽くキスをする。

「いってらっしゃい、脹相」

 脹相はしばらく私を見つめていたが、ようやく小さく頷いた。

「……行ってくる」

 扉が閉まる。

 私はその背中を見送って、家の中へ戻った。
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