第34章 脹相の朝
(……好きだ)
(好きだ)
(どうしてこんなに好きなんだ)
答えなんて出ない。
好きだから好きなのだ。
が笑うから好き。
自分を呼ぶ声が好き。
眠そうにしているところも好き。
怒った顔も好き。
少し拗ねた顔も好き。
そして今。
(俺を信じて、こんなにも無防備に眠っているが……好きだ)
脹相はとうとう耐えられなくなって、そっと彼女を抱き寄せた。
起こさないように。
それでも離れないように。
腕の中に収める。
彼女の頭が胸元に触れる。
「……」
(近い)
心臓がまたうるさくなる。
(……聞こえていないだろうな)
もし聞こえていたらどうしよう。
こんなに騒がしい。
自分でも笑ってしまうほどだ。
彼女が小さく息を吐く。
その吐息が胸元に触れる。
(……駄目だ)
脹相は目を閉じる。
(幸せすぎる)
このまま時間が止まればいい。
朝が来なければいい。
彼女がずっと自分の腕の中で眠っていてくれればいい。
――そんなことを考えてしまう。
「……」
だが、すぐに思い直す。
(いや)
(あなたには、ちゃんと今日を生きてほしい)
笑ってほしい。
好きなものを食べてほしい。
自分と一緒にくだらない話をしてほしい。
何でもないことで笑ってほしい。
その隣に、自分がいられたらいい。
(……それでいい)
いや。
(それがいい)
そんなことを考えていると、が小さく身じろぎした。