• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第34章 脹相の朝


彼女が小さく寝返りを打った。
脹相の心臓が跳ねる。

(……っ)

布団が少しずれると、肩が見えた。

(寒い)

即座に布団を掛け直す。

(風邪を引いたらどうする)

そして、そのまま数秒あなたを見つめる。

(……俺は今、何を心配しているんだ)

恋人なのだから当然だ。

そう思いたい。

だが、本当は。

(お前のことなら、何でも気になる)

眠れているか。
寒くないか。
暑くないか。
疲れていないか。

昨日ちゃんと食べたか。

無理をしていないか。

今、嫌な夢を見ていないか。

(……知りたい)

のことを、全部。

けれど全部を知ったところで、きっとまだ足りない。

(もっと知りたい)

そう考えたところで、脹相は自分に呆れる。

(欲張りだな、俺は)

その時。

が無意識に彼のほうへ身体を寄せた。

そして服の裾を、きゅっと掴む。

「…………」

脹相の思考が完全に停止した。

(……え)

視線が服を掴む彼女の手に落ちる。

(俺を……?)

たったそれだけのことなのに胸がいっぱいになる。

(離したくないのか?)

反射的にそう思う。

(いや、離れるつもりなどない)

服を掴んでいるあなたの指を見つめる。

(俺を必要としているのか?)

そんな期待が胸に浮かぶ。

けれど、すぐに打ち消す。

(寝ているんだ。偶然だろう)

それでも。

(……偶然でもいい)

口元がわずかに緩む。

(今だけは、そう思っていてもいいだろう)

小さな手に自分の手を重ねようとして――止まる。

(……起こしたくない)

触れたい。

抱きしめたい。

キスしたい。

「好きだ」と言いたい。

けれど全部我慢する。

(起きている時に言えばいい)

(起きているあなたに、ちゃんと伝えればいい)

そう思うのに。

彼女の寝顔を見ると、また胸がいっぱいになる。

/ 309ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp