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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第4章 手を繋ぎたい


付き合ってから何かが大きく変わったわけではなかった。

同じ家に帰って、同じテーブルで食事をして、いつものように他愛のない話をする。だけどほんの少しだけ空気が違っていた。

「脹相、そろそろ行こ」

「ああ」

二人で出かけるために家を出る。

並んで歩く距離もいつもと変わらない。

ただ、以前なら人混みを歩くとき、脹相が何のためらいもなく私の手を取っていた。

はぐれないように。危ないから。
そんな理由をつけながら。
だから今日も、当たり前のようにそうするのだと思っていた。

駅前の人混みに差しかかったとき、隣を歩いていた脹相の手が、私の手の近くまで伸びてくる。

けれど触れる直前で、ぴたりと止まった。

「……」

脹相は何事もなかったように手を引っ込める。

「……?」

 私は思わず彼の顔を見る。

「どうしたの?」

「いや……何でもない」

明らかに何でもない顔ではない。

少しだけ眉間に皺が寄っている。

歩きながら、脹相は何度か私のほうを見たけれど、目が合うとすぐに前を向いてしまう。

「脹相」

「何だ」

「さっき、手……」

「……」

 しばらく沈黙したあと、脹相が小さく息を吐いた。

「……繋ごうと思った」

「うん」

「だが……」

言葉が続かない。

「だが?」

「……昨日までなら、何も考えなかったんだ」

 脹相は少し困ったように私を見る。

「お前が隣にいるなら、手を取る。それだけだった」

 そこで一度言葉を切る。

「だが、お前は俺の恋人なんだと思うと、妙に意識してしまう」

「……」

「今までと同じことをするだけなのに、どうしていいのか分からなくなった」

 あまりにも真剣に言うものだから、思わず笑ってしまう。

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