第3章 誰にも見せたくない
「見せる必要がないからだ」
「誰に?」
「誰にも」
即答だった。
「……お前の顔を見て、可愛いと思うのは俺だけでいい」
心臓が、一拍遅れて大きく鳴った。
「……それ、嫉妬?」
「違う」
「じゃあ何?」
「……知らん」
珍しく歯切れが悪い。けれど手はどかない。
むしろ、逃がさないようにするみたいに頬を包み直される。
「ただ」
低い声が落ちてくる。
「他の奴が見ているなら、俺は見せたくないと思った」
「……脹相」
「お前は何も知らなくていい」
そう言って、ようやく手が少しだけ離れる。
けれど視界が戻るより先に、今度はその大きな手が頭を引き寄せた。
胸元に頬が当たる。
「……俺のところにいればいい」
「……それ、ずるい」
「何がだ」
「そんなこと言われたら、離れられなくなる」
「それでいい」
迷いのない声だった。
そして私は、もう一度だけ彼の胸元で小さく笑った。