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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第31章 欲求不満なのか


「……何?」

「だから、夢の通り」

「…………」

「一回やってみたら、満足して夢を見なくなるかもしれないじゃん?」

「…………」

脹相は何も言えない。

彼女はそんな脹相を見て、首を傾げる。

「……脹相?」

「…………」

「どうしたの?」

「……お前は」

ようやく声を出す。

「自分が何を言っているのか、分かっているのか?」

「え?」

本気で分かっていない顔だった。

「だって、脹相が何日も困ってるから」

「…………」

「夢のせいなら、夢と同じことを一回やってみればいいかなって」

「…………」

脹相は額を押さえた。

「……そういうところだ」

「何が?」

「お前は……」

言葉が続かない。

彼女はただ心配しているだけだ。

悪気など一切ない。

だからこそ困る。

「……駄目?」

「…………」

脹相はしばらく黙った。

そして。

「……駄目ではない」

「じゃあ、やってみる?」

「…………」

「夢の内容、教えてくれたら」

「…………」

脹相は彼女を見る。

本当に知らない。俺が今どれほど動揺しているのかも。
夢の中で何度も翻弄されていることも。

「……忘れてくれ」

「え?」

「今の話は忘れてくれ」

「なんで?」

「……俺が耐えられない」

「?」

彼女はますます不思議そうな顔をする。

「でも、脹相が楽になるなら――」

「それ以上言うな」

「……?」

脹相は顔を逸らした。
耳まで赤くなっている。

「……夢は夢だ」

「うん」

「現実のお前は」

「?」

「……今のままでいい」

彼女は少しだけ目を丸くする。

それから「そっか」と言いながらふわっと笑った。

「じゃあ、夢は見てもいいけど、無理しないでね」

「…………」

脹相は目を閉じる。

――それでは余計に意識してしまう。

そう思ったが、口には出さなかった。

そして何も知らない彼女は、「今日も一緒に走る?」と言っている。

脹相は静かに頷いた。

ただ昨日のランニングのあとにも夢を見たことを考えると、
おそらく、今日も眠れない。

そんな予感だけはしていた。
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