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②呪術廻戦〜脹相と恋人〜

第3章 誰にも見せたくない


「なあ、あの子結構可愛くない?」

少し離れたところから、そんな声が聞こえた。

何気なく顔を向けようとした、その瞬間。

視界が、ふっと暗くなった。

「……え?」

目元を覆ったのは、脹相の手だった。

大きくて、骨ばっていて私の顔なんて簡単に覆い隠してしまうほどの手のひら。

「脹相……?」

呼んでも、手は動かない。

「見るな」

低い声が、すぐ近くに落ちてくる。
その声に、胸が小さく跳ねた。

「でも、今――」

「いい」

短く遮られる。

そのまま、指先が私のこめかみに触れる。

手のひらの熱が、じわりと伝わってくる。

「お前は、見なくていい」

「……なんで?」

「見せる必要がないからだ」

そう言った脹相の手が、ほんの少しだけ位置を変える。

目元を隠していた指が頬に沿って親指が、耳の近くをゆっくり撫でた。

「……他の奴に見せる必要なんてない」

「……脹相」

「俺が見ていれば、それでいい」

あまりにも自然に言われて心臓が、どくんと鳴った。
目の前はまだ真っ暗なのにその手のひらの存在だけが、妙にはっきり分かる。

大きな手。私の顔を覆ってしまえるほどの。
その手に守られているような気もするし
同時に、どこにも行かせてもらえないような気もした。

「……手、おっきいね」

ぽつりと言うと、

「今、それを言うのか」

少し呆れた声。

「だって……」

指先に触れてみる。

私の指が一本ずつ触れていくのに対して、脹相の手はそれだけで私の頬をすっぽり包んでしまう。

「……こんなに大きかったんだ」

「知らなかったのか」

「うん」

すると、ふっと、手のひらに力が込もった。

ほんの少しだけ。

けれど、それだけで息を呑んでしまう。

「……今は、俺だけ見ていればいい」

低く囁かれてそこでようやく、話が繋がる。

「それで?」

「それで、何だ」

「なんで私の顔隠すの?」

すると脹相は、ほんの少しだけ手の位置をずらした。
目は見えないままだが、頬に触れる指先が、やけに優しい。
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