第27章 意外と淡白
午後。
時計を見る。
「……まだか」
夕方。
玄関のほうを何度も見る。
物音がするたびに顔を上げる。
「……帰ってきたか?」
しかし、外を走る車の音だ。
違った。
「…………」
と、俺はソファに座ったまま、少ししょんぼりする。
そして、とうとうスマートフォンを手に取った。
『もうすぐ帰るか?』
入力して…消す。
『学校はどうだった?』
これも消す。
『会いたい』
「……」
これは送れない。
朝、抱きしめてもらっておいて、昼にはもう会いたいなどと言うのは少し重い気がする。
そう考えているうちに、時間だけが過ぎていく。
そして、玄関から鍵の開く音が聞こえた。
「ただいまー!」
「!」
脹相は勢いよく立ち上がり、玄関へ向かう。
「おかえり」
「わ、早い」
靴を脱いだ私を見つめる脹相。
その顔が、ほんの少しだけほっとしている。
「どうしたの?」
「……いや」
脹相は目を逸らした。
「帰ってきたなと思って」
「うん。帰ってきたよ」
そう言って笑うと、私は朝と同じように、彼の胸へ飛び込んだ。
「……脹相、ただいま」
「……ああ」
今度は朝よりずっと強く、抱きしめられる。
「おかえり」
「ふふ。またぎゅーしてくれる?」
「……もちろんだ」
腕に込められた力が、少しだけ強くなる。
「……ハグは」
脹相が小さな声で呟いた。
「満足するまで、もう少し時間をかけてくれ」
「え?」
「朝は……あまりにも早かったから」
「……もしかして、寂しかった?」
「…………」
図星だったらしい。
脹相は答えない。
ただ、私の肩へ顔を埋める。
「……少しだけ」
「少しだけ?」
「……かなり」
「ふふっ」
笑いながら背中に腕を回す。
「じゃあ今日は、いっぱい抱きしめてあげる」
「……本当か?」
「うん」
「……約束だぞ」
朝とは打って変わって、今度は脹相のほうがなかなか離してくれなかった。