第6章 雑用係
「はあ、はあ……全部やっつけたゾ……」
グリムちゃんが辺りをぐるりと見回す。
もう、どこにも白い影は漂っていない。
ここにあるのは、廊下を覆いながら揺らめく青い火の波。
木材が焼けて弾ける音。
立ち込める熱気と煙。
外で降りしきる雨。
そして、一緒になって肩で息をする私とグリムちゃんのふたり。
今度こそというように、そろりと私の方へ振り返って見上げてくるグリムちゃん。
本当にこれで終わりなのかを問うてくる面持ちだった。
見つめ返しながら、呼吸を少しずつ整えようとして――ふと、目をしばたかせる。
青い炎の輝きを吸って、仄かに明るみを宿すグリムちゃんの全身がすっかりボサボサなことに今更気が付いてしまった。
ただでさえボロボロのリボンはよれて煤汚れ、お腹も背中も首周りの毛並みも結構派手に乱れきっていたものだから、私は思わず「……ふふ」と吐息を震わせた。
「グリムちゃんたら、すっごくボサボサ……っ、ふふふっ!」
息を整えるのもそこそこに笑ってしまうと、ムッとしたグリムちゃんが足元までやってきて、式典服の裾を乱暴に引っ張ってきた。
「おいオマエ!オレ様使いが荒いゾ!もっと優しく扱え~!」
「ふふっ、そうね、ごめんねグリムちゃん。大活躍だったわねーっ」
しゃがみ込んで、目の前にある小さな頭へ両手を伸ばす。
本当は整えてあげるつもりだったはずなのに、気付けば撫でるというより毛並みを思いきり掻き回していた。
だって、……ふふっ。
やっと終わったんだもの。
グリムちゃんと最後まで一緒に戦い抜いた。
その実感が嬉しくて、楽しくて、胸の奥から込み上げてくる熱っぽい逸りを抑えきれない。
妙に上がっているテンションのおかげで、身体に溜まった疲弊すら軽くなっている気がしていた。