第5章 試練
しばらくの間、グリムちゃんを抱いたまま無事の余韻に浸っていると、玄関の扉が開く音が聞こえてきた。
次いで、焦げ跡がついた廊下の床をコツコツと鳴らす上品な靴音。
ランプの明かりによって伸びた長い影が私たちに差し掛かったところで、来訪者の姿が露わになる。
「こんばんはー。優しい私が夕食をお持ちしましたよ。……って、それは先ほど入学式で暴れたモンスター!」
「あらー、学園長先生。こんばんはー」
やってきてくれたのは、学園長先生だ。
わざわざ夕食――時間帯的には夜食だ――を届けに来てくれるなんて、本当に優しい人ねー。
食事の問題はどうしようかと思っていたから助かるわー。
ありがとうございます、とお礼を笑顔で述べる私が当たり前みたいにグリムちゃんを抱っこしていることを見るや否や、にこやかに湛えられていた学園長先生の表情が一変して驚愕に染まる。
ガチャンと音を鳴らしながらトレーを持つ片手を上げ、ランプを持ったもう片方の手の人差し指だけを伸ばしてビシリとグリムちゃんを差す学園長先生は「追い出したはずなのに、何故ここに!?」と、お手本のようなオーバーリアクションを見せてくれた。
そんなに わなわな震えるとトレーの上に乗ったお夜食が落ちちゃうわー。
グリムちゃんは私の膝の上で前足を組み、得意げな流し目でフンと鼻を鳴らす。
「オレ様がお化け退治してやったんだゾ!感謝しろっ!」
「ん?どういうことです?」
「グリムちゃん、すごかったんですよー。実は、さっき――――」
学園長先生が届けてくれた夕食をグリムちゃんと分け合いながら、学園長先生が立ち去った後にグリムちゃんと会ったことから先程のゴースト退治までの事情を、時折グリムちゃんの自慢を間に交えながら一通り話し終える。
廊下に出たら、いきなりゴーストたちが現れてびっくりしたと言えば、学園長先生は「そういえば」と何やら思い当たる節がある素振りを見せた。
聞けば、この寮には悪戯好きのゴーストが住み着いて以来、生徒たちが寄り付かなくなって無人寮になっていたのだとか。
つまり曰く付きの物件だった訳ねー。